クトゥルー神話を、萌えイラストを交えて解説していくという、萌え本の一種。
しかし、考えてみて欲しい。
そもそも、クトゥルー神話に出てくる、クリーチャー/神性/あるいはおぞましいなにものかは、尋常な精神では正視に耐えうるものではない。
文章でもおぼろげに、読者の想像力に訴える書き方をするか、あるいは狂気の精神が映し出す影絵のようなものとして描かれているそんなものたちをイラスト化するという行為は非常に難しく、また、本来の『人の知り得ぬ恐怖』というものをスポイルする結果となる。
であるならば、この本のようにいっそ美少女化してしまうというのも、一つの手なのではないだろうか。
詩句にも言うではないか。
美わしきもの見し人は
はや死の手にぞわたされつ
美麗なイラストもまた、狂気への誘いである。
……と、冗談めかして書いてみたが、実は結構本気で上記のようなことは思っている。
描き出せないのなら、ある意味で手に入らない美しいものに変えてしまうというのは一つの解であろう。
ただ、この本で唯一残念だと思うところは、本来の(文章から想像した)絵図も載せてしまっていること。そこは原著からの引用などで補い、読者の想像に任せて欲しかったと思う。
ちなみに、クトゥルー神話の解説本としてはいたって真面目で、詰め込みすぎの感すらある。なかなか面白い本。
……というようなことを、発売後しばらくして購入した時には書いていたのだが、いまでは絶版のようである。残念。