FUTRE is WILD

フューチャー・イズ・ワイルド

ドゥーガル・ディクソンといえば、『アフターマン』、『マンアフターマン』と秀逸なSF──未来生物図鑑──をものした人物であるが、このフューチャー・イズ・ワイルドもまたその系譜につながる架空の未来を描いた作品である。

魚が空を飛んだ理由

『マンアフターマン』が、人類が滅びていく(あるいは新たな種となっていく)過程を描き出したものであり、アフターマンが人類が滅びた後、5000万年後に栄える奇妙な動物たちを描き出したものであったと同様に、この作品も未来の世界とそこに生きる生物たちを描き出している。

しかも、なんと今回は二億年後まで!

二億年後の世界では、巨大なイカが陸上をのし歩き、空では生活の場を空中に移した魚──表紙イラストはこのオーシャンフリッシュ──が、海にあふれる甲殻類を狙っており、砂漠では昆虫たちが奇妙な世界を作り上げている……というのがディクソンのシミュレーションの結果であるらしい。

私は、こういった嘘八百なシミュレーションというのが大好きで、鼻で歩く生物を描き出した架空動物論文『鼻行類』などもむさぼるように読んだ。

科学的にも尤もらしいといえば尤もらしいけれど、想像力を極限まで駆使した結果、とてつもなく奇妙に広がる可能性としての未来世界。

それはすさまじくもあり、恐ろしくもある。けれど、なにより、未来というものがいかに不確定であり、可能性に満ちあふれているかも示してくれる。なにより、そこに繰り広げられる緻密な架空生物たちの生活は、単純にわくわくする。

進化──これは字面的に、変なイメージを与えすぎると思うのだが──というものが、いかに無慈悲で、そしてなにより驚異に満ちているかは、現存する生物たちや、化石となって残ってくれている生物たちを見た時にもっとも感じるだろう。

けれど、それをどう表現するか、となるとなかなか難しい。この本や、これまでのドゥーガル・ディクソンの著作は、そういった不思議さ、というものに対する表現の一つの形となりえているように思う。

たとえば小説や、実用書を手にとる時、その作者を知っていたり、あるいは少し流し読みすることで、おおよその内容が期待できると思う。しかし、この本は、表紙のイラストを見ただけで、すばらしい期待を抱かせてくれる。この奇妙な生物はいったいなんなんだ、と。そして、その期待は、けして悪いほうには裏切られない。
手にとる時、本当にわくわくどきどきする本だ。ぜひにもおすすめする。

しかし、もっとおすすめしたいマンアフターマンは絶版状態なんだよなあ……。