棺姫のチャイカI[榊一郎]

棺姫のチャイカI (富士見ファンタジア文庫)

アニメも一期の放映が終了したということで、原作小説のレビューなどを。

『棺姫のチャイカ』は、富士見ファンタジア文庫から、2014年6月現在、九巻まで発刊済み。著者はベテランかつ多作な榊一郎である。

本巻はシリーズの開幕編となる。

アニメでは1話2話に相当する本巻であるが、ストーリーとしては、典型的なボーイ・ミーツ・ガールとなる。

戦場で戦うために小さな頃から修行を重ねて生きてきた青年が、長い戦国時代が終わってすっかりニートに。そんなところにあらわれた棺をかつぐ少女によって、彼の人生は再び彩りを取り戻していく……。

少女が『魔王』と呼ばれた人物の娘だったり、彼女が求めるのがその『魔王』の遺体だったりと、世界観的な広がりは色々とある。だが、結局の所、これはトールという青年が、再び立ち上がり、一歩を踏み出す物語だ。

アニメを見てからなおさらに思うが、アニメはチャイカの物語であり、原作となる小説はトールの物語なのだろう。

そうなったのは、ビジュアル的なものが押し出されるアニメという特性や、心理描写に分け入れる小説としての特性が故のものではないだろうか。

アニメでは省かれたが、小説では丁寧に描き出される部分、省いたが故に強調される部分。

アニメは観たものの原作を未読の人は、そのあたりを考えながら読むと、より面白く思えることだろう。

もちろん、アニメとは関係なく、ファンタジー小説としての出来もとてもよいものなので、オススメである。

 

なお、同作者の『スクラップド・プリンセス』を読んだ人は、あれ、なんか似てるなと思うかもしれない。これは、作者が「棄てプリのような作品をもう一度」と求められた結果であるようだ。

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